「いいか、配達員が来たらキレろよ!」
これ、生きてきた中でもっとも理不尽だった要求です。
今からウン十年前の東京、眠らない街・新宿。古びたコンクリートに黒っぽいしみがこびりつき、どうみてもカタギでない人々が行き交う、団地のような集合住宅の一室。むわんとした空気が漂う中にいるのは、編集長とカメラマンと女優さん、そして筆者。
当時エロ本編集部に勤務していた筆者は、その日もピンクな撮影を行っておりました。昼はピザを取ろうという話になり、注文したんです。
しかし、電話して30分以上たってもブツは届きません。
キレ散らかすことにかけて右に出るものはいない、そんな当時の編集長(今は知らない)。案の定、すぐにイライラはマックスに到達しました。
まだ来ないのかよ?としかめっ面をキメこんでおられます。
まじかよー、もういいよー、また私にキレるの勘弁してくれよー
と、今なら軽やかな気持ちでいられます。が、当時の筆者は若かった。ハタチそこそこの純粋な小娘には、もう編集長が怖くて怖くて仕方がなかったんですよ。
おまけに小心者ゆえに「なにか悪いことしたかも」「私のせいかも」と、100%勘違いでビクビクおろおろ。
そして飛び出したのが、冒頭の編集長の発言です。
「いいか、配達員が来たらキレろよ!」
……は?
いや、はぁ??
はぁぁぁああああああ???
どうですか、今思い出してみてもやっぱり意味がわかりませんね。計画的にキレるって、できるもんなの?
どうしよう、ブツはもうすぐやってくる。
心臓がばっくんばくん跳ね上がる。
胃からナニかが飛び出しそうだぜ!!!
ピ…ンポーン
ぎょえーーーーーーーーーキてしまったーーーーーーー!
撮影で「イクイク」あえぐ女性を尻目に、こちらは「来た来た」ヤバイどうしよう。
方針がまるで定まっていない。
ぎょわわわわわ…………怖い怖いタスケテおかあさーん
そして、当時の筆者はアホだった。怖かった。冷静な判断ができなかった。
頭に血がカッっとのぼり(本当か?)
気づいたときに口から出た言葉がコレです。
「あの……遅かった……ですね?ちょっと安くなったり……しませんか?」
全然キレてない、ただのクレーマー。難癖つける嫌なヤツ。
すかさず編集長がやってきて
「違う!!!!!そういうんじゃねぇんだよ!!!!」
と、私まで配達員と一緒に激怒りをされ、罵詈雑言を浴びせれたような気がします。もうね、なんて言われたか詳細を覚えていませんがね。
そんなこんなで、今でもときどき思い出すんですね「あれの正解、なんだったんだろうなー?」と。
“正しいキレ方”ってなんだろう
その昔キレられすぎて、誰かにキレることができない体になりました。頭にくることはあれど、家族に怒るくらいです。
キレるって、偉いの?
キレるって人生に必要?
できれば「キレる」とは、縁遠い人生を歩みたいものですね。
そういえば以前、お坊さんに「怒りをコントロールする方法」をお聞きしました。
怒りに気付き、そのまま受け入れる。自分の体の反応を観察していくと、いつのまにか受けが流せる。要約するとそんな内容でした。セルフマネジメント研修を取材したときにも、講師の方が同じ内容を教えていましたよ。
怒りを感じたら、キレそうになったら、まずは自分を観察してみましょう。
キレる効能はある/ない?
キレるといいことがあるのかな?メリットがあるのかな?との視点から考えてみましょう。
結論:メリットなんて、ない!
強いて言うなら、相手に威圧感を与えられることでしょうか。威圧感を与えても、いいことなんて何もない気がしますけどね。
ではなんでキレるのでしょうか。それは「我慢できないから」「怖いから」かもしれませんね。ヤられる前にヤル、攻撃される前に仕掛ける!そんな気持ちが働いているのかも。
キレ散らかす人を見かけたら、あービビってんのかな?かわいそうに、と、遠巻きに眺めておきましょう。関わらないのが一番ですね。
ここまで読んでくれたあなた、好きです!!!筆者はキレませんので、どうぞ安心してご相談くださいね。