ふとした拍子に、舌先で元親知らずの場所を探ってみます。
と、不思議にへこんでいる親知らず跡地。
そのたびになんだか
「うへっ」
という微妙な気持ちになるんです。
親知らずを意識すらしていなかった出産前
親知らずを抜いたのは、娘が生まれてから3~4ヶ月の頃。
『妊婦は出産前に歯医者さんに行きましょう』なんて話は、歯医者さんの陰謀だ!
と、勝手に思い込んでいた私は、かたくなに歯科検診を受けませんでした。
臨月ギリギリまで仕事をめいっぱい詰め込んでみたり、移住してみたり、移住した家をDIYしてみたり……
今思えば、何か自分に恨みでもあるのか?
と軽く心配になるレベルで、いらない鍛錬もしくは修行をしていたような記憶があります。
俗にいう、マタニティーブルーってやつですかね? おそらく違いますね。
そしていざ出産が終わってみると、口に広がる鈍痛。
口の右奥、親知らずのヤツが痛みだしたんです。
まだまだ小さい娘を無理やり夫に任せ、とにかく痛みを何とかしないとおかしくなってしまう!
と、歯医者さんに泣き付きました。
歯医者さんはレントゲン写真を見ながら
「じゃあ、抜きましょうか?」
と軽~いノリ。
「お弁当にお箸お付けしますか?」
みたいに言われたので、
思わず「はい」とお答えしました。
親知らずの抜歯は手術というより工事!
しかしね、親知らず抜くのがあんなにもオオゴトだとは想像もできませんでしたよ奥さん!
抜歯の時のゴリゴリ感は半端じゃありません。
ノコギリみたいな感触が骨に響くという、人生の初体験。
あまりにも非日常の中にあると、妙に冷静になることありませんか?
「歯医者さんって、あんなに必死の形相で力を込めたりするんだな。お医者さんよりは工事現場のおっちゃんに近いかも」
「このゴリゴリ響く感覚、石臼になった気分だな」
口を開けながら、そんなことを思ったり、
「今麻酔が切れたらどうなるんだろう? ちびっちゃうかもしないな。
でもこの歯医者のイスベッドは撥水加工みたいな感じだから、口をゆすぐ時にこぼしたふりして水浸しにしてもそんなに迷惑かからないかもな……」
なんて最悪の事態を想定してドキドキしたりしたり。
自分が歯を抜かれていることを忘れ、あれこれと観察しては妄想を繰り返しておりました。
しかし、楽しかった(?)時間もそこまで。
麻酔が切れるにしたがって、尋常でない痛みがじりじりとにじり寄ってきたんです。
あれれー?
結構痛いぞー?
痛み止めさん、がんばってーーーー!
声援むなしく、3日はものすごい痛みが続きました。というか、だんだん痛くなってきたんです。
親知らずの抜歯後はいつまで痛いのか? と検索してみても、1週間とか2~3日とか人によって違うとか意見はバラバラ。
2日と3日じゃ全然違う!
24時間も違う!
1分でも1秒でも早く治まって欲しいときに、そんな大きな単位の話はやめてぇえええ!
抜歯の痛みは引いたけれど
1週間も過ぎると痛みは落ち着きました。
しかし、ボコッとへこむ親知らず跡地。
それはまるで落とし穴のように
それはまるで食べかすの集積場のように
それはまるで異次元の入り口のように
圧倒的な違和感、異空間を私の口の中に作り出したのです。
舌先で触れるたびに、
「うへっ」
となります。
力を上手く入れられないというか、自分の歯茎じゃない感じというか。
ぐゎしのポーズをしようとして変な汗をかく感覚
へその中をわしわしするとブルっとくる感覚
でも、たまにやっちゃう。
そんなものに近いのかもしれません。
ほんのりと恐怖。
でも、気になる。
今日も私は舌先で、口の中の異世界・親知らず跡地を確かめては
「うへっ」
を繰り返しています。
不思議な中毒性を持つ親知らず跡地、あなたも体感してみては?
ここまで読んでいただきありがとうございます!
それでは、また。泥ぬマコでしたー。